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『世界の壁』沓石卓太著
 第一部 4 敗戦と選挙

第二次大戦後、無条件降伏した日本は始めて、外国の統治下に入るという経験をしたのですが、占領する側のアメリカにとっても大仕事であったでしょう。
当時、共産主義や社会主義の進出が著しく、どうすれば自由主義の旗を守れるか、苦しい立場に立ちかけていたアメリカは日本の保守政党の健闘に驚いたのです。
いくら占領軍でも、選挙には干渉できません。干渉したのでは自由主義の旗に背きます。なんと、日本人は、社会党や共産党を選びませんでした。
選挙の結果を見てアメリカの政府は日本人をすっかり信頼し、戦後の復興を熱心に助けてくれたのです。
日本が戦後の復興を成し遂げただけでなく、戦前を上回る繁栄を獲得したことがアメリカの自信と信用に貢献したことも確かです。
なぜ、日本人が社会主義を選ばなかったか。共産党も社会党も、候補者を多数立候補させて目いっぱい戦ったのです。
日本教職員組合には丹頂鶴というあだ名が付いていたぐらいで、大学をはじめ知識人の多くが左派を応援している環境で社会党でさえ多数党にはなれずじまい。共産党に至っては、大衆から支持されることは遂になかったのです。

明治以来、日本は、西洋の後を追うことで近代国家に脱皮することができました。知識人の西洋崇拝は無理もないことです。その西洋では、社会党ないし共産党は今でも多数党です。それが、日本では、そうならなかったのです。

選挙は無記名ですからだれに投票するのも自由です。学者も一介のサラリーマンも、そして男性も女性も権利は同じです。要するに大衆に支持されなければ当選できないのです。
だれも共産党の演説を聴きに行かなかったのかというとそうではありません。共産党の演説が妨害されたわけでもないのです。共産党や社会党の言い分は十分大衆の耳に入っていたのです。選挙は公正に行われ、大衆が選んだのは保守党でした。

だれもが迷っていたのです。確信のあった人は少なかったでしょう。真剣に訴える共産党や社会党の声が耳に入らないわけはありません。数から言えば労働者が圧倒的に多いのですから、西洋各国と同じように左派が勝利を収めても何の不思議もなかったのです。それにもかかわらず社会主義政党を選びませんでした。
自由党を率いる吉田茂の魅力の影響もあったでしょうが、それだけではなかったのです。大衆は、共産党や社会党の言うことが信用できなかったのです。理論的に正しいように聞こえても、現実はまた別であるということを、国民は歴史上の体験の中で学んでいたのです。選択権を与えられた大衆には、間違いのないほうを選ぶ分別があったのです。
日本の大衆は、知識人以上の判断力を発揮したわけで、本当に頭の下がる気がします。ただ、はっきりわかっていて判断したのであれば、それはもう感心する以外にないのですが、はっきり自信があってのことかというとそうでもないような気がするのです。

「なんとなく分かっている」と「はっきり分かっている」の間には、かなり差があります。なんとなく分かっているは、「分かっていない部分もある」ということです。
敗戦という、経験のない危機をなんとか乗り切ることができたのは幸運でした。この幸運を僥倖で終わらせず、自覚あるものに代えることができれば、これは本当の幸運です。何が分かっていないのか。このことについては、みんなが考えなければなりません。
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『世界の壁』沓石卓太著/郁朋社 1,155円(税込) 
2008年10月 発行 ISBN 978-4-87302-425-7

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# by giron-gym | 2008-10-09 17:15 | 立ち読みコーナー
自己紹介
1932年生 男性
住所 兵庫県
学歴 神戸市立神港高校


小学生のころ、空はどこまで続いているのだろうと考え始めて,ノイローゼぎみになってしまいました。
キリがないとはどういうことか。大人になってからも、この問題には頭を悩ませました。

28歳ぐらいの時、何かの拍子に「無限など存在しない」とつぶやいたのです。
考えがあってつぶやいたわけではないのです。自分の力で解決できない問題をただ否定してみただけの行為なのかもしれません。
しかし、そのとき、それが答えであるかもしれないと感じたのです。
「そうか、そうだったのか」目の前に立ちふさがる大きな壁が崩れる予感がしたのです。
# by giron-gym | 2008-09-30 15:06 | 自己紹介
議論の利益
議論をすることで自分の考え方を人に知ってもらえ、人の考え方も知ることができます。
私たちが何を目的に行動するにしても、合理的であるにこしたことはないのです。ひとり一人の行動が合理的であれば、それは社会にとっても利益です。そのためにこそ議論は必要です。
# by giron-gym | 2008-08-24 10:41 | 公開議論の場